お客様からよくいただく疑問・質問をご紹介。
Q&A形式で分かりやすくお答えいたします。
よくある質問(Q&A)
業務委託について
委託できる業務内容を教えて下さい。
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主に、以下の内容を行なっております。
- 官公庁への労働保険・社会保険手続き業務
- 給与計算業務
- 就業規則・各種規定の作成・見直し
- 助成金書類の作成及び申請代行
- 人事労務管理に関する相談対応就業規則の作成・見直し
- 関係官庁が実施する調査時の立会い
どのような契約方法がありますか?
- 基本的には年間委託契約の自動更新となります。新規加入お手続き、労働保険年度更新、社会保険算定基礎届等単発でのご依頼も可能です。
人事労務に関する相談対応等は年間顧問契約と案件ごとスポット契約が可能です。
業務委託を検討しているのですが委託内容を詳しく教えて下さい。
- ありがとうございます。お電話もしくはホームページお問合せよりご連絡下さい。担当職員がお伺いし説明させていただきます。
当事務所では、沖縄県内(離島を含む)すべての地域のお客様を対象にお手伝いさせていただいております。
沖縄市に中部支所もございますので、中北部のお客様のご依頼に対しても迅速な対応が可能です。
連絡先:(本部)TEL:098-855-2133 (中部)TEL:098-933-7060
労働保険(労災保険・雇用保険)について
労働保険は必ず加入しなければいけませんか?
- 労働保険は国が運営している、強制的な保険です。
原則として、労働者を一人でも雇っていれば適用事業となり、事業主は労働保険の成立手続きを行い、労働保険料を納めなければなりません。
未加入のままで、業務中の事故が生じた場合には、事業主に休業補償や障害補償、遺族補償などの責任が生じ、会社に大きな負担がかかります。
未手続の事業所については早めの手続きをお勧めします。
パート従業員が業務中にケガをした場合、労災保険は適用となりますか?
- 労働者災害補償保険法は、その事業場で働く全ての労働者を対象としていますので、事業所が労災保険の要件を満たしていれば認められます。
雇用保険に加入できる条件は?
-
次に該当する労働者の方は、事業所規模に関わりなく、原則として、全て雇用保険の被保険者となります。
- 1週間の所定労働時間が20時間以上であること
- 31日以上の雇用見込みがあること
法人の役員、事業主と同居している親族は原則として加入する事はできません。
ただし会社役員であっても、最終決定権を持たず、もっぱら社長の指揮命令を受けて就労する役員は、ハローワークの特別確認を受けて加入できます。(つまり、被保険者となります。)
個人事業主と従業員1人だけの事業場であっても、従業員は雇用保険に加入できます
雇用保険への加入手続きを事業主が怠っていた場合はどうなりますか?
- 雇用保険への加入資格があるのに、つまり、週20時間以上働いていて、31日以上継続的に雇用されるのであれば、事業主がハローワークへの加入手続きを怠っていた場合であっても、雇用開始日が確認でき就労実態が判明していれば、遡って被保険者となることができます。
何ヶ月勤務していたら失業の給付がもらえますか?
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原則12ヶ月です。正確に言うと、離職前2年間に賃金支払の日数が12ヶ月必要です。
ただし、退職理由が解雇・倒産等の会社都合によるものであれば、6ヶ月です。また、自己都合退職であっても、以下のような正当な理由のある場合については、会社都合と同じ扱いになります。
- 体力の不足、心身の障害、疾病、負傷、視力の減退、聴力の減退、触覚の減退等により離職した者。
- 妊娠、出産、育児等により離職し、雇用保険法第20条第1項の受給期間延長措置を受けた者。
- 父若しくは母の死亡、疾病、負傷等のため、父若しくは母を扶養するために離職を余儀なくされた場合、または常時本人の介護を必要とする親族の疾病、負傷等のために離職を余儀なくされた場合のように、家族の事情が急変したことにより離職した場合。
- 配偶者、または扶養すべき親族と別居生活を続けることが困難となったことにより離職した者。
-
次の理由により通勤不可能、または困難となったことにより離職した者。
- 結婚に伴う住所の変更
- 育児に伴う保育所その他これに準ずる施設の利用、または親族等への保育の依頼
- 事業所への通勤困難な地への移転
- 自己の意思に反しての住所または居所の移転を余儀なくされた場合
- 鉄道、軌道、バスその他運輸機関の廃止または運行時間の変更等
- 事業主の命による転勤または出向に伴う別居の回避
- 配偶者の事業主の命による転勤若しくは出向または、配偶者の再就職に伴う別居の回避
- その他、早期退職優遇制度以外の人員整理等で、希望退職者の募集に応じて離職した者等。
社会保険(厚生年金・健康保険)について
社会保険の適用事業所について教えて下さい。
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法人の事業所と、常時5人以上の従業員を使用する個人事業所が、健康保険(政府管掌・組合管 掌)の強制適用事業所とされており、加入しなければなりません。
ただし、個人事業所であっても農林水産業、サービス業、法務業、宗教業は上記に該当しません。
また、強制適用事業所でない場合でも、当該事業所に使用される者(被保険者となるべき者に限る。)の2分の1以上の同意を得て、厚生労働大臣に申請して認可を受けることにより適用事業所となることができます(健康保険法第31条)。
パート・アルバイトでも社会保険に加入させる必要がありますか?
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パート・アルバイトでも以下の要件のいずれにも該当する場合は、社会保険に加入しなければなりません。
- 1週の労働時間が一般(常時雇用される)の従業員の4分の3以上であること。
(例えば一般の従業員の所定労働時間が週40時間の場合、週30時間以上勤務するのであれば、社会保険加入しなければなりません。)
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1ヵ月の勤務日数が一般の従業員の労働日数の4分の3以上であること。
パートの方についても、一般の従業員と同様に労働時間、勤務日数の把握をすることが大切です。
被扶養者の認定要件を教えて下さい。
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次の基準をもとに被扶養者として認定するかどうか判断されますが、一律に判断されるのではなく、生活の実態とかけはなれるなど妥当性を欠く場合は、実情に応じて判断されます。
- 年収が130万円未満で、かつ被保険者の年収の1/2未満であるとき。
ただし、年収が被保険者の年収の半分以上であっても、130万円未満で、被保険者の年収を上回らないとき、世帯の状況を総合的にみて、被保険者が生計維持の中心的役割を果たしていると認められる場合は、被扶養者と認定される場合があります。
- 被保険者と別居している場合には、年収130万円未満で、かつ扶養者の年収が被保険者からの仕送額(援助額)より少ないときに被扶養者となります。※60歳以上又は年金受給者は130万円未満を180万円未満と読みかえます。
退職後の社会保険料の控除について教えて下さい。
- 給与の社会保険料は翌月控除が原則であり、また、資格喪失日(退職日の翌日)が属する月(1日から末日までの間で)は社会保険料がかかりません。
例えば、退職日が7月30日の場合は、資格喪失日が7月31日となるため、7月分の社会保険料はかかりません。
給与の締切日が20日で支払日が当月28日の場合は、7月28日支払の給与から社会保険料(6月分)を控除しますが、8月28日支払の給与からは社会保険料は控除しません。
退職日が7月31日の場合は、資格喪失日が8月1日となるため、7月分の社会保険料がかかることになり、8月28日支払の給与から社会保険料(7月分)を控除することになります。
また、仮に7月10日に支給した賞与から控除した社会保険料は、退職日が7月30日の場合(資格喪失日7月31日)は、7月分の社会保険料がかからないため、本人に返還しなければなりません。
退職後の健康保険について教えて下さい。
- 退職後、すぐにお仕事が決まっていない場合、また、何らかの理由により健康保険に加入することができない場合、①健康保険任意継続保険か、②国民健康保険、③家族の扶養に入る、のいずれかをご本人の判断で選択し、取得の申込をします。
どちらを選択するかは、保険料の安い方で決めると良いでしょう。
求人・採用について
求人票の労働条件で労働契約が成立するのですか?
- 原則として求人票の労働条件が労働契約の内容となります。万一あとから変更しなければならなくなった場合は早い段階で労働条件の変更を十分に説明し労働者に選択肢を与え同意を得ることが重要です。
試用期間はどのように明示すべきなのですか?
- 求人を行う際、試用期間については①試用期間の有無、試用期間があるときはその期間、②試用期間中と試用期間終了後とで従事すべき業務の内容が異なるときは、それぞれ従事すべき業務の内容等を明示しなければなりません。
労働者を雇い入れる場合、労働条件は口頭で十分説明すれば、特に書面を交付しなくても構いませんか?
-
以下の場合については、「書面」での交付が必要です。(労働基準法第15条)
- 労働契約の期間
- 就業の場所・従事する業務の内容
- 始業・終業時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩、休日、休暇、交替制勤務をさせる場合は就業時転換に関する事項
- 賃金の決定・計算・支払いの方法、賃金の締切、支払いの時期に関する事項
- 退職に関する事項(解雇の事由を含む)
労働契約の期間を2年間として問題ありませんか?
- 問題ありません。
1回の労働契約期間の上限は原則3年間となっています。
ただし、60歳以上の労働者又は専門的な知識等があるとして厚生労働大臣が定める基準に該当する労働者は上限が5年と定められています。(労働基準法14条)
労務管理について
パート社員にも有休を与える必要がありますか?
-
はい。パート社員にも有給休暇を与えなければなりません。
有給休暇は、労働基準法が定める全ての労働者に発生するものであり、正社員のみに与えられるものではありません。したがって、要件を満たせば、パート・アルバイト従業員、臨時社員にも当然与えなければなりません。(勤続期間に応じた付与日数は表でご確認下さい)
年次有給休暇の付与日数
週の所定労働日数 (1年間の労働日数) |
5~6日 (217日以上) |
4日 (169~216日) |
3日 (121~168日) |
2日 (73~120日) |
1日 (48~72日) |
勤続期間 |
6ヵ月 |
10日 |
7日 |
5日 |
3日 |
1日 |
1年6ヵ月 |
11日 |
8日 |
6日 |
4日 |
2日 |
2年6ヵ月 |
12日 |
9日 |
6日 |
4日 |
2日 |
3年6ヵ月 |
14日 |
10日 |
8日 |
5日 |
2日 |
4年6ヵ月 |
16日 |
12日 |
9日 |
6日 |
3日 |
5年6ヵ月 |
18日 |
13日 |
10日 |
6日 |
3日 |
6年6ヵ月以上 |
20日 |
15日 |
11日 |
7日 |
3日 |
有給休暇を取得する権利は一定期間継続勤務し、所定労働日の8割以上出勤した労働者に発生するものです。
社員が有休を使用した場合、精勤手当や皆勤手当をカットすることはできますか?
- 年次有休休暇を取得することにより、精勤・皆勤手当をカットすることは認められません。
(労働基準法では136条で)使用者は、第39条第1項から第3項までの規定による有休休暇を取得した労働者に対して、賃金の減額その他不利益な取扱いをしないようにしなければならないと定められています。
定年後1年契約の契約再雇用者の年休はどうなりますか?
- 契約が変更されても実質的に継続しているのであれば勤続年数に応じた日数を付与します。定年前に保持していた日数も繰り越されることになります。
法定労働時間を超えた場合の割増額を教えて下さい。
-
以下の表をご確認ください。
割増対象となる労働 |
通常の賃金(時間単価)に対する割増額(※) |
時間外労働 |
2割5分増以上 |
休日労働 |
3割5分増以上 |
深夜労働 |
2割5分増以上 |
時間外労働で深夜労働 |
5割増以上 |
休日労働で深夜労働 |
6割増以上 |
所定労働時間が7時間30分とされている場合、
9時間勤務させた時の割増賃金の計算方法を教えて下さい。
- 労働基準法では、1日8時間を超える労働をさせた場合に、割増賃金(通常賃金の2割5分増)を支払わなければならないとされています。
このケースの場合は、8時間目から9時間目にかけての1時間分は割増賃金を支払わなければなりません。
また、7時間30分目から8時間目までの0.5時間分については、就業規則等に通常賃金の2割5分増し支払う旨が記載されていなければ、割増賃金は必要ありませんので、通常の賃金計算の0.5時間分を支払えば足ります。
時間外手当(残業手当)を固定(定額)で支払っても問題はないですか?
-
時間外手当を固定(定額)にすること自体は問題ありませんが、例えば30時間分の固定時間外手当を支払うとした場合に、時間外労働時間の実績が40時間であった場合は、10時間分の時間外労働割増賃金を支払わなければなりません。
逆に、実績が下回っている場合でも30時間分の固定時間外手当を支払うことになります。
※時間外手当を固定にすることのメリットは、次のとおりです。
- 人件費の予算が組みやすい。
- 人件費の増減が少なくなる。(従業員にとっても毎月の収入が安定する。)
- 給与計算処理の時間短縮化(時間外労働時間を集計しなくてもよりという意味ではありません!)
※逆にデメリットは次のとおりです。
- 基本給等の見直しをしないと、人件費が上がる。
- 勤怠管理がずさんになりやすい。
- 従業員に説明を十分にしないと誤解を招きやすい。
代休と休日の振替の違いを教えて下さい。
- 代休とは、休日労働の事実の後に代わりの休日を与える(別の日の労働義務を免除する)ものであり、代わりの休日をあらかじめ指定しないものをいいます。
代わりの休日を与えたとしても,休日労働の前に事前に「代わりの休日」を指定していないため、休日労働の事実は変わりません。
従って、事業主に休日労働割増賃金の支払いの義務が生じます。
それに対し、休日の振替とは、あらかじめ他の労働日を休日とした上で、本来休日と定められていた日を労働日とすることをいいます。
休日の振替が行われると、元の休日は労働日となり元の労働日は休日となります。
従って、元の休日における労働は休日労働とならず、事業主に休日労働割増賃金の支払いの義務は生じません。
出産予定の社員がいます。どのような手続きが必要ですか?
-
以下の給付を受けることができます。当所担当までご連絡下さい。詳しくは全国健康保険協会のHPをご覧ください。
給付の種類 |
給付内容 |
出産育児一時金 (健康保険) |
出産時にかかる費用 |
出産手当金 (健康保険) |
出産の為仕事を休み、お給料がもらえない場合に仕事を休んでいた期間、休業1日につき標準報酬日額の3分の2相当額が支給される。(産前42日+産後56日分) |
育児休業給付金 (雇用保険) |
一定要件を満たした雇用保険被保険者が、1歳未満の子を養育するために育児休業を取得、給与の支給がない場合に支給される。 |
※育児休業中の社会保険料の免除について
お子さんが3歳に達するまでの間、育児の為休業した期間中の社会保険料が免除になります。
賃金台帳の保存期間について教えて下さい。
- 賃金台帳の保存期間は3年間と決められています。
(労働基準法第109条) また、同法施行規則第56条で3年間の起算日を「最後の記入をした日」と規定しています。
また、事業主は、賃金台帳のみならず、労働者名簿及び雇入・解雇・災害補償・賃金その他労働関係に関する重要な書類を3年間保存しなければならない、とされています。
営業マンの給与を全額歩合制で支払っても問題はないですか?
- 全額歩合制で支給することはできません。
労働基準法は、出来高払い制その他請負制で使用する労働者の賃金について、働いた労働時間に応じて一定額の賃金の保障を行うことを使用者に義務づけています。
(労働基準法27条)従って、営業実績が全く無かったため賃金を一切支払わないということは許されず、給与に一定の保障給を設定する必要があります。保障給について法令上は具体的な定めはありませんが、少なくとも平均賃金の100分の60程度とすることが妥当であると解されています。ただし、最低賃金を下回ることはできません。
時間外労働については、すべて割増賃金を支払わなければならないのでしょうか?
- 時間外割増賃金が発生するのは1日8時間、1週間で40時間を超える労働については2割5分増し以上の割増賃金を支払わなければなりません。変形労働時間制を導入している場合は取り扱いが少し変わりますのでご注意ください。
退職・解雇・雇止めについて
年間の労働契約を結んでいますが、今回、一身上の都合で、契約期間の半ばながらも退職したいと思っています。会社の了承無く辞めようと思っていますが、問題はないでしょうか?会社からは引き留められていますが、どうしても勤めるわけにはいきません。
- 契約期間の定めがある場合は、原則として、使用者は契約期間の満了前には労働者を辞めさせることが出来ない反面、労働者も契約期間中は会社を辞めることができません。
ただし、民法第628条によると、雇用の期間を定めたときといえども、やむを得ない事由がある場合は、各当事者は直ちに契約を解除することができることとされています。
やむを得ない事情がある場合には、早めに会社側に伝え、了承を得なければなりません。
会社が自分に合わないので、すぐに辞めたところ、会社から損害賠償を請求する旨告げられました。これを支払わなければなりませんか?
- 損害賠償に応じなければならないか否かは、個別の民事上の問題となりますので、一概に判断できませんが、労働者が退職する場合、会社の就業規則にその手続きの定めがあればその規定に従う必要があり、規定がなくても民法では期間の定めのない雇用契約については、2週間前までには退職の意思表示をする必要があります。
この退職手続きを行わないことは、会社から損害賠償を求められる根拠となることがありますので注意が必要です。
労働者を解雇する場合の手続きについて教えて下さい。
- 労働者を解雇する場合は、少なくとも30日前の予告が必要となります。
また、予告期間が30日に満たない場合は、その満たない日数分の平均賃金の支払が必要(これを「解雇予告手当」といいます。)となります。(労働基準法第20条)
労働基準法第20条の解雇手続きを踏みさえすれば、解雇は許されるのでしょうか?
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労働基準法第20条の解雇手続きを踏んだからと言って、解雇が正当であるとは限りません。先ず、次に該当する場合は、解雇そのものが法律で禁止されています。
- 業務上の傷病による休業期間及びその後30日間(労働基準法第19条)
- 産前産後の休業期間及びその後30日間(労働基準法第19条)
- 国籍、信条、社会的身分を理由とする解雇(労働基準法第3条)
- 労働者が労働基準監督署へ申告をしたことを理由とする解雇(労働基準法第104条)
- 労働組合の組合員であること、労働組合の正当な行為をしたこと等を理由とする解雇(労働組合法第7条)
- 女性であること、あるいは女性が婚姻、妊娠、出産したこと、産前産後の休業をしたことを理由とする解雇(男女雇用機会均等法第8条)
- 育児休業の申出をしたこと、又は育児休業をしたことを理由とする解雇(育児・介護休業法第10条)
- 介護休業の申出をしたこと、又は介護休業をしたことを理由とする解雇(育児・介護休業法第16条)
また、「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして無効とする。」と規定されていますので、従業員を解雇する際には、これらの点に留意する必要があります。
会社の経営が非常に苦しく、これ以上雇用を維持するのは困難だと思い、労働者を解雇することにしました。経営が苦しければ、それだけで解雇は法的に許されるのでしょうか?
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整理解雇をする場合には、裁判例で以下のような4つの要件が必要とされています。
- 人員削減の必要性(特定の事業部門の閉鎖の必要性)
- 人員削減の手段として整理解雇を選択することの必要性(解雇回避のために配置転換などをする余地がないこと)
- 解雇対象者の選定の妥当性(解雇対象者の選定基準が客観的、合理的であること)
- 解雇手続きの妥当性(労使協議などを実施していること)
従業員を就業規則の規程に基づき「懲戒解雇」にしようと思っています。懲戒解雇する場合にも、労働基準法第20条の解雇予告手続きは必要でしょうか?
- 会社の就業規則で定める懲戒解雇の事由に該当したとしても、労働基準法に規定する解雇予告又は解雇予告手当の支払いは必要となります。
但し、その懲戒解雇の事由が事業場内における盗取、横領、傷害等刑法犯に該当する行為など労働者の責に帰すべき事由によるもので、かつ、所轄労働基準監督署長の「認定」を受けた場合には、解雇予告又は解雇予告手当の支払いは不要です。(労働基準法第20条)
年契約のパートタイム労働者を契約更新しながら雇用していますが、このような労働者に対して契約更新をしなかった場合、解雇の手続きは必要ですか?
- 契約期間の満了により雇用関係が終了する場合、一般的には「解雇」には該当しませんので、労働基準法第20条の解雇手続きの問題は生じません。
ただし、有期労働契約の締結時や期間の満了時におけるトラブルを防止するために、使用者が講ずべき措置について、厚生労働大臣が基準を定めています。
その中では、「契約締結時に、その契約を更新する旨明示していた有期労働契約(締結している労働者を1年を超えて継続して雇用している場合に限ります。)を更新しない場合には、少なくとも契約の期間が満了する日の30日前までに、その予告をしなければならない。」とされています。(有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準)
退職労働者が給料の残額を請求してきましたが、所定の給料支払日に支払えばよいですか?
- 退職労働者から請求があった場合には、給料日前であっても請求を受けた日から7日以内に支払わなければなりません。(労働基準法第23条)
社内貯蓄及び私物のパソコンを残したまま、労働者が突然退職しました。寮の部屋代の精算が済んでいないため、精算が済むまでこれらを返還しないでおこうと考えていますが、問題がありますか?
- 労働基準法第23条には、「労働者の死亡または退職の場合で、権利者の請求があった場合には、請求を受けた日から7日以内に、賃金を支払い、積立金、保証金、貯蓄金その他名称の如何を問わず、労働者の権利に属する金品を返還しなければならない。」と規定されています。
よって、労働者の社内貯蓄及び同人のパソコンは、請求があれば7日以内に本人に返還する必要があります。寮の部屋代については、これらの返還の際に、本人と十分話し合いをする必要があるでしょう。
退職者が同業社に就職したり、同業を開業するのを防ぐ方法はありますか?
- 退職後に特定の職業に就職したり開業したりすることを禁じることは、憲法上認められている労働者の職業選択の自由を制限することや、経済的弱者である労働者の生計の道を奪いその生存を脅かすおそれがあることから、(①競業避止に関する雇用契約上の特約の存在があるうえで、②競業避止の内容が必要最小限であり合理的であること)が求められます。
雇用契約上特約をかわす際には、就業規則あるいは入社時の個別の合意文書(誓約書)などで明確にする必要があります。
退職する者から残っている全ての年休の取得の申し出があったが、
付与しなければならないのでしょうか?
- 労働者から、労働しなければならない日に、年次有給休暇の取得の申し出があれば取得させなければなりません。なお、年次有給休暇の買い取りの約束は禁止されています。実務上の処理としては、話し合いで現実の引き継ぎの関係で出勤する日を確認し、退職日をずらすことや、取得できなかった年休が生じた場合は退職慰労金に替えて支払うなど検討してはいかがでしょう。
退職時に想定されるトラブルとその対処方法について教えてください。
- 退職理由の相違によるトラブルが多いです。退職の際は口頭のみで確認せず、退職届や合意文書など書面でやり取りをするようにしましょう。また、退職後に情報が漏れた場合などに対処するため、退職後の誓約書を取り付けることを義務化しましょう。
就業規則・規定・協定について
就業規則は全ての事業所で作成しなければならないのでしょうか?
- 就業規則は労働者が常時10人以上いる場合は、作成して監督署への届出、労働者への周知が義務化されています。なお、10人未満の事業所でも労務上のトラブルを予防するために作成することをお勧めします。
就業規則を作成する際のポイントを教えて下さい。
- 市販されているものやホームページで公開されているような「モデル就業規則」をそのまま使わないようにしましょう。参考にするのは構いませんが、就業規則は会社独自の制度やルール、勤務形態、想定されるトラブル回避を念頭においてそれを盛り込んだものを作成するようにして下さい。
また、休職復職、服務、懲戒や年次有給休暇のルールはしっかりと作成するとトラブル防止につながります。
就業規則は見直しをする必要がありますか?
- 法改正が頻繁に行われているため、その都度変更する必要があります。また、社会情勢や会社の実情に合わせて定期的に見直すようにしましょう。
就業規則で労務管理に係るルールを文書化すると、就業規則をたてにして労働者からの要求が強くなり、経営者が困ることにならないでしょうか?
- 仮に就業規則がない場合でも、年次有給休暇や残業代の請求、育児休業の請求など、法律で当然に認められたものは拒否することはできません。労働者に対して守ってほしいことをルール化することにより、会社を守ることにつながるものです。ですから、就業規則は作成したほうが望ましいと思います。